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植物ホルモンのことを知ってバラの剪定方法を理解しよう!
植物には植物ホルモンと呼ばれる植物の成長を促す体内物質があることが知られています。
これを利用することによって、花が咲いたら受粉していなくても実をならせたりすることもできます。
種無しブドウなどはこのような技術によって作られています。他の方法もあるかもしれません。
また、バラなどの花の仲間は切り花を作るときに植物ホルモンを利用して生産していることもあります。
それだけキレイなバラが育つのならば少しくらい植物ホルモンのことを調べて見たくなりませんか?
また、バラを育てるときに必須とも言われる剪定はこの植物ホルモンの働きを上手く活用するために行っているようなものです。
ですから、
バラの剪定を理解する=植物ホルモンの働きを理解する!
ということであるともいえます。
まず、簡単に3種類の植物ホルモンについて見てみましょう。どれも「~~in」(○○イン)という名前になっています。
「~~in」(○○イン)と記憶すると覚えやすいと思います。
それぞれの植物ホルモンが1つの物質ということではなく、同じ働きをする物質をまとめてこのように呼んでいるだけです。
また、似たような物質を与えても同様の効果が得られるので販売されている植物ホルモンでは似たような物質を擬似的に与えて効果を得たりしています。
オーキシンとは?
今流行りの有名なオキシトシンとは違います。
オーキシンという植物ホルモンです。
auxinと表記します。Wikipediaによると以下のような作用が知られています。
- 植物の成長の促進(及び抑制)
- 細胞分裂の促進
- 発根の促進
- 側芽の成長の抑制(頂芽優勢)
- 落葉・落果の抑制
- 子房(及び果実)の成長・成熟の促進
- 芋の発芽の抑制
気になるのがいっぱいあります。
バラを育てている人にとって気になるのは、「発根の促進」と「側芽の成長の抑制(頂芽優勢)」あたりでしょう。
挿し木ではルートンなどの植物ホルモンを使いますが、これがオーキシンの仲間だということです。
また、「側芽の成長の抑制(頂芽優勢)」は頂芽優勢(ちょうがゆうせい)ということを聞いたことがあると思いますが、これがバラを剪定する理由です。大事なので覚えておいて下さい。
ジベレリンとは?
ジベレリン(gibberellin)という植物ホルモンになります。
Wikipediaによると以下のような作用が知られています。
- 伸長成長の促進
- 休眠打破・発芽促進
- アミラーゼの誘導
- 花芽形成・開花促進
- 単為結実促進
また、オーキシンの作用を支援することも知られています。
「単為結実促進」というのを見ると、受粉していないのに実ができて大きくなっていく種無し葡萄などのようなものが作られることがよく分かります。
また、バラで気になるところは「花芽形成・開花促進」というところでしょう。
サイトカイニンとは?
サイトカイニン(cytokinin)という植物ホルモンになります。
Wikipediaによると以下のような作用が知られています。
- 細胞分裂促進
- シュートの形成
- 側芽の成長促進
- 老化抑制
- シンク化
- 種子の発達
- エチレン合成促進作用
バラを育てている人に聞いた「最もテンションが上がる瞬間は?」というアンケートの1位はおそらくベーサルシュートが伸びてきたときでしょう。
否応なしに「シュートの形成」が気になりますね。
「もう、買います!」
まだ決断しないでくださいね。
続きがあります。
植物ホルモンはバラの植物体の中に溢れている!
よく、
「女性ホルモンが足りない!」
という人が居ますがそれは嘘です。思わず言ってしまいますが、人間では体内で必要な量を分泌することができてしまいます。
必要なときに分泌されるだけです。分泌されないのは必要がないときであって健康な人は外部から摂取するようなものではありません。
病気の治療は別の話になります。
これはバラの植物ホルモンでも同じなのですが、
「いくらバラを綺麗にたくさん咲かせたい!」
「たくさん挿し木して好きなだけ増やして庭中を高いバラの品種で溢れさせたい!」
といっても、健康なバラに植物ホルモンをむやみに多量に与えても意味がないばかりか、害が起きてしまいます。
そんなわけで、自由に買えるのですが、やみくもに与えればいいっていうもんじゃありません。
また、農薬として販売されていますので、目的と分量が記載されていますのでそれに従って与えることが絶対条件です。
農薬として販売されている植物ホルモンを使った有効なバラ栽培の手助けについては別記事でまとめたいと思います。
先柄をカットしないと脇芽が伸びないのは頂芽優勢(ちょうがゆうせい)のせい!
バラには全ての葉の付け根に脇芽となる新芽の元が存在しています。
でも、花が頂点だけに咲いていてあとの節は全く新芽が伸びてきません。
一部のつるバラや一部の品種は頂点に花が付いていても脇芽が伸びていくのですが、木立バラはこれがありません。
ですので、花が咲き終わったら剪定して先端をカットしてやらないと、新しい芽が伸びて次の花が咲くことができないのです。
これがあるから、バラは剪定をするのです。
冬剪定も夏の更新剪定も花の咲きがらの切り戻しも同じ理由で行います。
さて、この頂芽優勢が起こる原理として、さきほどの「オーキシン」が関与しているのです。
このオーキシンが成長を促進させるには一定の決まった濃度である必要があるのです。薄くても濃くても植物の成長は促進されません。濃すぎると成長が抑制されてしまいます。
先端しか成長しない品種のバラは、側芽(脇芽)の成長にちょうどいいオーキシンの濃度がとても低く、頂点の成長に必要な濃度はとても濃いということになっています。
つまり、頂点に丁度いい濃度のオーキシンを分泌していれば脇芽から新芽は伸びてこないということになります。
これが、頂点をカットすることによって「どこも成長する点が無い!」と植物が焦って慌ててオーキシンの分泌する濃度を下げるのでしょう。
そのため、脇芽からも新しい新芽が伸びてくるのです。
節の上の方ほど要求されるオーキシンの濃度が高く、下の方の節ではとても低い濃度のオーキシンじゃないと成長が始まらないのです。
もう、おわかりですね。
花の咲きがらを切り戻すのも、冬剪定も夏場の更新剪定も、つるバラを横に誘引するのもこういったことが理由になっています。
これが頂芽優勢の仕組みとバラの剪定が必要な理由です。
また、植物ホルモンのオーキシンが濃すぎて脇芽が出ないのですから、やみくもにオーキシンを買ってきて与えればいいってもんじゃないことが分かるかと思います。
鉢植えバラで剪定方法を理解する
バラは剪定と誘引で仕立てていきます。
鉢植えの方が剪定しやすいのと、必要に迫られるため剪定方法を理解するにはいいと思います。
また、自分が好みの仕立て方に選定すればいいのでどれが正解でどれが間違いというものではありません。
自由に自分好みの形に仕立てればいいのです。
ここではバラの頂芽優勢という特性をどのように剪定して誘引すれば利用できるかという実例を紹介していきます。
木立性バラと半つる性(柔らかい茎)のバラを例に挙げてみました。
本当に大きくて枝が硬いつるバラは鉢植えの支柱に誘引するのでは参考になるような仕立て方は紹介が難しいと思ったので省いています。
木立性のバラの例
HTの「カスクドール」です。ひっきりなしに花が咲いていて3番花くらいになってしまいました。ハダニで下の方の葉は落ちてしまいました。まだ、7月初旬です。
どうしましょう?
こんな感じに更新剪定してしまいました。夏の剪定には少し早いですが、このまま伸ばして上だけ葉と花が付いているのは見ていて辛いので全部を更新するために梅雨明け前ですが大幅に強めの剪定をしてしまいます。冬剪定と同じくらいカットしてしまいました。冬場だと結果が出るまで時間がかかるので不安ですが、夏場は1週間で伸びてきますので健康で元気な株ならば問題ないはずです。
もしも、このまま更新剪定していなかったら?
もし、今咲いている花が終わって咲きがらだけを少し切り戻す感じで剪定していたら、次の新芽はどのように伸びていたでしょう?この明るい緑色の線の先端に新しく花がつくことになります。古い葉はさらに落ちて減ってしまっていることでしょう。
このままでは「先っぽしか葉が付いてないじゃん!」と言われてしまうような草姿になっていたでしょう。
剪定したことによってどうなるか?
更新剪定したことによってどのような未来へと変わったのか?そんなことを予想して新芽の伸びてくる様子を描いてみました。
剪定の例って「もったいない!花数が増えたのか減ったのか分からない!」という感じで、相変わらずわかりにくいのですが、こんな感じになるのではないでしょうか?
新芽は9本くらいの予定であのまま何も更新剪定しなかったとしても9本くらいは新芽が伸びていそうだったので、「もったいないおばけ」に取り憑かれている人にはちょっと厳しい決断かもしれません。
でも、花は上に高く伸びればそれだけ栄養分を地面から吸い上げて高くまで送らなければならないので枝は細く、花は小さくなりがちです。
それを短くすることで立派な大きな花が咲くと思えば数は同じでも嬉しいはずです。
何よりも、草姿が綺麗な方がいいはずです。
人は花にだけ注目しがちですが、枝葉がキレイな形で生えているのが最高に美しいと感じるものなのです。
苔を愛好する人の気持ちを考えれば緑がいかに美しいものか分かるようになると思います。感性は磨かれていくものです。年をとっても衰えることはありません。
半つる性(茎が細くしなやかな)のバラの例
殿堂入りしている「アイスバーグ」です。つるアイスバーグではなく、木立性のアイスバーグです。
二番花が終わったところでどうしたらいいものか?行き場を失っている状態です。
こんな感じにカットされました。夏は大胆になれますね。絶対に失敗しないという気温と日照が味方に付いているからです。
やっぱり、冬更新だとここまでできないような気もします。
これをさらに支柱を使って誘引して少し枝を水平に傾けて倒しています。こうすることによって頂芽優勢の仕組みを最大限活用することができるはずです。
もしも、このまま更新剪定していなかったら?
このまま花を咲かせていたらどうなっていたでしょう?こんな感じの未来が見えます。
「あなたには、上だけ葉っぱの星が出ています。」おそらく下の方はスッカスカで見るも耐えられない姿になっていることでしょう。こんな未来は嫌ですね?
ではどうすればいいのか?
そうです。剪定をするのです。有機肥料を出してハサミを持って立ち上がりましょう!
剪定して支柱で誘引したことによってどうなるか?
剪定+誘引したことによって17本くらいの新芽が伸びてくると予想できます。そのままにしていたら7本くらいの新芽になりそうでしたので2.5倍くらいの賑やかさになったと思います。
さて、これは顕著な「良い未来予想図」が描けました。やっぱり、剪定+誘引ができると大幅に仕立て力が向上しますね。
枝が細い、自立できないような品種の場合は逆に誘引しやすいと考えて仕立てを最大限たのしんでください。
アイスバーグはとても誘引しやすいのでおすすめです。
もちろん、もっと大きなオベリスクやアーチなどに誘引してもいいのですが、鉢植えで剪定方法を分かりやすく理解するのにいい例としてこんなコンパクトな仕立て方にしています。
これでも10号鉢です。
日本の家ではこれくらいでも大きな鉢植えという感じになりますので十分見ごたえがあるものになると思います。
こんな大きな花の鉢植えなんてアジサイくらいしか対抗できるものが思いつきません。しかも四季咲きですからバラは圧倒的です。
楽天市場からのおすすめ商品
気になった商品はカートに入れてキープすると後で探しやすくなります。
選定したら肥料と農薬を撒くことを忘れずに!
当然これだけ選定したのですから、植物は栄養を要求します。
色々な植物ホルモンを出すのですからできれば単一の成分だけの化成肥料ではなく、有機肥料で微量元素までしっかりと総合的にサプリのように補ってやってください。
そして、たくさん食べたのですから悪い虫が寄ってこないように農薬を撒いておきます。自然農薬でもバチルス菌でも土に撒くタイプの粒剤でもスプレー式の農薬でも何でもいいです。
でも、春先ほどたくさんの肥料はあげないでください。
夏場の虫は驚異的です。
これは侮ってはいけません。
半分くらいに抑えた肥料の量にしてください。それでも農薬はしたほうがいいでしょう。
高層階のベランダならだいぶリスクは減るでしょう。それならば、虫食いを見つけたらスプレーする程度で十分だと思います。
バラを剪定する意味や理由は?
もうおわかりですね?
「なぜ、バラを剪定するのでしょうか?」
これは「見た目」を良くするためです。
人間がどうやったらプードルが可愛らしく見えるか想像して、勝手に不思議なヘアスタイルにカットしているのと同じことです。
バラには全くもってして迷惑な話なんですが、人間が見て楽しむためだけのために更新といって体の一部をバシバシカットしているのです。
ほんとうに身勝手なものです。人間とは。
でも、バラは人間が人間のために作り出された人工的に品種を維持している植物です。
人に喜ばれなければバラの意味がありません。
思いっきり楽しむのもバラに対しての礼儀といえるでしょう。そして感謝を忘れずに育ててください。
バラの剪定方法に決まりはない!自由にやればいい!
バラを剪定する実例を紹介しましたが、全く参考にしなくていいものです。
こんな風に真似るのは馬鹿げていると思います。
自由に好きな形に剪定してください。
きれいに見えることが一番大事です。
バラは、
「この枝を切ったら花が咲かなくなる、、」
「1年に1回の開花のチャンスだ、、」
ということはあまりないので自由にカットしていいと思います。
ある意味、自由にやっていれば自分のやり方が見つかるといえます。
鉢植えなんて剪定するためにあるようなものです。
植木鉢は回転させるのがとても容易です。地植えは絶対にできません。自分が裏側に入れないこともあります。
その点、鉢植えは美容室の椅子のように自由にくるくる回せますので、お客さんの好みじゃなくても美容師の好きなように刈ってもらって大丈夫です。
こんな素敵なカットモデルもなかなかいません。
素晴らしい花を咲かせてくれるのです。
アーティストになったつもりで思いつくままに剪定してみてください。
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草と花と自然の力を取り入れて元気になりましょう。
少し変わった園芸情報を発信しています。一般的な栽培方法と異なるものもあります。
標準的な栽培方法は農協のお店などでお聞き下さい。